- 連載記事『【幾何学×Processing】第2回:世界を作る最小の部品「点」の正体とは?』を執筆する中で湧き上がった「本当に点は大きさゼロなのか?」という疑問を、実際に紙とペンを使って検証し、その身体感覚を記録する。
- 点とは、部分を持たない(大きさゼロの)ものであるは本当かたしかめる。
どうもクリエイティブコーダーのワタタクです。
幾何学を勉強していると、真っ先にぶつかる強烈な違和感があります。
古代ギリシャの数学者ユークリッドは言いました。
「点とは、部分を持たない(大きさゼロの)ものである」
……本当にそうでしょうか?
気になったので、手元にあるノートを開き、ありとあらゆるペンを総動員して「紙の上に点を打ちまくる実験」をやってみました。
この記事を書いた人


クリエイティブコーダー
「才能」ではなく「発見」で描く。文系・36歳からの上達ログ。
- ゼロから独学でクリエイティブコーディングに挑戦し、以下の実績を達成
- 開始1年8ヶ月目までに公募6つに挑戦し、3つ入選(勝率50%)
- KITTE大阪の18メートルあるAxCROSS大型スクリーン
- 虎ノ門ヒルズステーションタワーB2F TOKYO NODE エントランスサイネージで展示
- UN:O(東京大手町)にある会員限定のサテライトオフィスにて2作品選出・常設展示
- 開始1年8ヶ月目までに公募6つに挑戦し、3つ入選(勝率50%)
- 開始1年9ヶ月目に、虎ノ門ヒルズ49階、地上250mのインフィニティプールへ作品提供・展示
ノートの上に現れた「色とりどりの矛盾」
手持ちの筆記具を取り出し、紙の上にペン先を「トン」と垂直に落としてみます。


- シャープペンシル・製図用ペン(Rotring 600 0.5mm, Staedtler 925 15, Kaweco 0.7mm, Lamy 2000 0.7mm, S20 0.3mm など)
- ボールペン(ジェットストリーム 0.38mm / 0.5mm, STALOGY 0.5mm / 0.7mm, JIM-KNOCK など)
- マーカー・サインペン(MILDLINER 各色, 油性マーカー など)
結果は明白でした。
どう足掻いても、「大きさ」が生まれてしまうのです。
油性マーカーを置けばドカンと大きな黒い円が広がり、0.3mmの極細シャープペンで突いても、紙の繊維に黒鉛がめり込んでわずかな面積を持つ。
当たり前ですが、物理世界に生きている以上、インクや芯を使う限り「大きさゼロの点」を人間が紙の上に描くことは不可能です。
実験で気づいた「3つの身体的リアル」
実際に紙とペンで実験してみて、頭で考えていただけでは絶対に分からなかった3つの発見がありました。


① ボールペンは「点を打つ」のが異常に難しい
文字を書くときは滑らかなボールペンですが、ペン先を垂直に「トン」と置くだけだと、インクがうまく出ないか、紙を引っ掻くだけになりがちです。
ボールペンの構造は「先端の極小ボールが転がることでインクを運ぶ」仕組み。つまり、最初から「線(動き)」を描くために作られた道具であって、「点(静止)」を打つための道具ではないという身体的な気づきがありました。
② シャープペンと鉛筆が、最も幾何学の思想に近い
一方で、シャープペンシルや鉛筆の黒鉛は、紙に触れた瞬間にピンポイントで定着します。
特に製図用シャープペン(0.3mm〜0.5mm)を直角に立ててトンと置いたときの「これ以上小さくできない極小の位置」が決まる感触は、幾何学の「位置の確定」という思想ともの凄く相性が良いと感じました。
③ 「ほくろ」のように見え隠れする点の面白さ
ノートの隅に、見えるか見えないかギリギリの極小の点を打ってみたとき、ふと「人の肌にあるほくろみたいだな」と思いました。
意識しなければ風景に溶けて消えてしまうけれど、一度気づいて目を凝らすと、そこがすべての中心(特異点)に見えてくる。
「見えそうで見えない点」を打つ行為そのものが、なんだかすごく静かで新鮮な感覚でした。
3. なぜ数学者は「無理な嘘」をついたのか?
紙の上に「大きさゼロの点」が存在できないことは、ペンを握れば多くの人が分かります。
ではなぜ、古代の数学者たちは「点には大きさがない」と定義したのでしょうか?
理由は単純で、「大きさを認めると、すべての計算と作図が崩壊するから」です。
もし点に0.5ミリでも厚みがあったら:
- 2つの点を結ぶ直線が何本も引けてしまう(端と端を結ぶのか?中心を結ぶのか?)
- 角の頂点がボヤけて、分度器で角度を正確に測れなくなる
だから数学者たちは割り切ったのです。
「紙の上の黒いインク粒は、本物の点ではない。『ここに点が存在しますよ』と人間に知らせるための、ただの【標識(看板)】にすぎない」と。
アナログの手触りが、コード(Processing)に命を吹き込む
このアナログの実験をやった後で、改めてProcessingの画面に戻ってみます。


void setup() {
size(400, 400);
background(240);
stroke(0);
strokeWeight(5); // ← これが「標識」の大きさ
point(200, 200); // ← これが「数学的な真の点(位置)」
}画面中央にポツンと現れる黒い丸。
以前なら「ただのドット」に見えていたものが、今ならはっきりと分かります。
- コンピューターの内部にある本質は、サイズを持たない「X:200, Y:200 という純粋な座標データ(0次元)」
- 画面に表示されている太さ5ピクセルの丸は、人間が見えるようにあえて置いた「マイルドマーカーやシャープペンのインク(標識)」
ペン先をモレスキンの紙に落とし、インクの滲みと格闘した手触りがあるからこそ、コードの1行が持つ「深み」が身体に染み込んできます。
幾何学は、教科書の中の数式で終わらせるだけでなく、お気に入りのペンを1本持って、白い紙に描いてみる楽しみもある。
すべての世界は、点から始まっています。
▼ 今回の実験の元になった本編記事はこちら。
※数学的な0次元の定義と、Processingでの実装コードをさらに詳しく解説しています。


▼ 点をProcessingのコードで表現した記事がこちら。


それでは今日もレッツワクワクコーディング。

